ららら科学の子

ららら科學の子

ららら科學の子

いつだかなぜだか話題になってたようで、その頃から気になってカバーをめくった装丁が素敵(まんがの鉄腕アトムに中国語のせりふ)なのはよく知っていたのですが読まず終いで、大学の図書館にあったので借りてきた。借りられた形跡が無い。
東京は東京駅、数寄屋橋、国際フォーラム、渋谷、池ノ上、環七、世田谷区役所、神泉、駒場東大、広尾、と私になじみの深い場所ばかりが出てきて、しかし現実とかけ離れた主人公の設定に楽しい違和感。
また学生運動にかかわっていた主人公が日本を出たのが1968年で、「パッチギ!」の設定と同じ、しかし私には全くビジョンが無い時代をちょっと補強してくれるような感じ、それと対照的になじみがありすぎる青山ブックセンターの政変やドンキホーテの山積みが放火でなくなってしまったこと、くじら屋が改装してしまった事など、たった二年のうちに変わってしまったこと、の変わる以前が多く描かれていることの驚き、うれしさ。
主人公が出会う昼間に牛丼屋でビールを飲んでる女子高生へ私が感じる親近感、帰国子女の18歳の日本語への私が感じる違和感、これがなんかすごいリアル。
あらすじは、学生運動のさなかなぜか中国へ渡り30年後日本へ密入国で帰ってきた浦島太郎が心強い友人の助けで東京をぶらぶらしてる話、282ページ時点。
なんで話題になってたのか知らず、全く先入観なしで読んでていきなり世田谷区役所とか数寄屋橋とか出てくるから私にとってはおもしろすぎる!
そしてこの時点でまだ主人公が新宿に行っていないのが楽しみすぎる。
小説を読むときはわりとまんがとかのキャラのイメージを勝手につけて読むのですが、これは映画の「オールドボーイ」、見てないけど。50男が主人公で女子高生が出てきたりするので。
わりと分厚い本だし文体は、なんというの、どういうジャンル分けがあるのか知りませんが、直木賞系? しかし実は高村薫とは大きく違い頻繁に改行があるので高村薫とは違い半日で半分まで来てしまった。私は高村薫は平均一週間以上かかるのです、毎日寝不足で。
そしてようやく気が付いたのだけれども、よしもとばななとかえくに香織とかより、こういう文体のほうが私は好きなのでした。